2019年3月9日土曜日

ワクワクさん登場


 ヒダオサムは、のっぽさんでおなじみの幼児造形番組「できるかな」で1970年の立ち上げから終了まで、20年間、造形指導を担当。そののち、ワクワクさんでおなじみの「つくってあそぼ」をたちあげ、さらに23年間、造形アイデア、造形監修をつとめてまいりました。
 その中で、粘土をつかったテーブル人形劇場、「ねんどシアター」(ヒダオサムが命名)を創作、 提唱し、ひろめてまいりました。
 「できるかな」のはじまりの10年間は、「かたち」を探求した10年間でした。
 ところが、幼児の造形には、「かたち」だけでは説明のつかない現象があることに、10年目くらいから気がつき始めました。
 それは、造形へのモチベーションに「いのち」の発露があるということの発見でもありました。
 モノに「いのち」を感じる、幼児アニミズムに気づきはじめたわけです。
 「造形」とは読んで字のごとく「かたち」を造ると書く訳で、テレビ幼児造形番組においても、それまでは、まず「かたち」ありきだったと思います。しかし、「かたち」の無い「混沌」のなかに、まず、「いのち」の発露があって、そこに「かたち」が現れるという逆転の発想もありではないかという疑問をもちはじめたということだと思います(「かたち」が先か?「いのち」が先か?)。
 そして、ワクワクさんが登場するのです。 「できるかな」では、やかんが象になったり、ポットがペンギンになったりというような、「モノ」の「かたち」を利用して、それに目玉をつけて人形をつくり、直接手で持って動かす人形劇をずいぶんやりました。
 ところが、意外なことに、紙に次ぐ幼児の造形素材であるはずの粘土を、正面からとりあげたことは一度もありません。
 それは、粘土にあるのは「かたち」以前の「混沌」そのものだったからだと思っています。「かたち」があるようで、無いからです。
 1990年に「できるかな」からワクワクさんの「つくってあそぼ」にかわって、ほとばしるように、ねんどの造形に、正面から取り組んだ番組(ねんどシアター・クレイシアター・粘土劇場・)ができるようになりました。
 ワクワクさんは粘土の手びねりができたのです。
 同時に保育士指導者むけの造形あそび研修会にもヒダオサムが積極的に出て行って、放送とともに、大きな反響と共感をえることができたのでした。
 そうした「ねんどシアター」にまつわる活動の集大成として、一冊の本にまとめて、改めて、「いのち」が先か、「かたち」が先かの問題の終止符を打ちたいと思います。